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ガス輻射熱焼物器のパイオニア

記事更新日19.09

村本 吉克

【問い合わせ先】
株式会社建厨

あま市篠田八原103番地
TEL 052-444-8054
HP http://www.kenchu.co.jp/
印刷用ページ
   
 

調理器具の一つである「ガス輻射熱焼物器」に約40年間こだわり続けている「あいちの製品」です。株式会社建厨(以下:建厨)は、あま市篠田八原にあります。最寄り駅は名鉄津島線「木田駅」です。駅から車で南へ5分の所にあります。そして今回は、親子(村本 吉克社長 村本 旭取締役)への取材です。

   
 

調理器具は愛知県特有の産業ではありません。しかし、愛知県にはガス調理器具を製造する大手メーカー2社があります。その会社名は株式会社パロマ、リンナイ株式会社です。その中で建厨は独自の技術で大手メーカーと張り合っています。また、名古屋には焼肉無煙ロースターを扱う株式会社シンポもあります。このようなことから焼物調理器具は「隠れたあいちの製品」と考えました。
また今回インタビューした取締役の村本 旭さんは、このシリーズで2016年5月に掲載した株式会社コメットカトウ(業務用加熱調理機器専門メーカー)に勤務した経緯もあり、見えないつながりに驚くばかりです。

   
 

昭和45年(1970年)頃は1人で自動車メーカーの社員食堂へ厨房機器を納品・メンテナンスしていました。その後、昭和49年(1974年)のオイルショック時に社員食堂の厨房機器業界も競争が激しくなりました。そのため自社で厨房機器の製造と厨房施設の建設をしたいと考え建厨と命名しました。また、ライバルが少ない製品の製造販売を考えて具現化したのが魚焼きロースターでした。

   
 

昭和33年リンナイ株式会社はドイツのシュバンク社と技術提携して遠赤外線ガスバーナーを製造販売、この応用でガスストーブや各種焼物器を開発しました。その一つがリンナイ業務用グリル荒磯です。耐熱ガラスを使った遠赤外線ガスバーナー焼物器は炭火焼を彷彿させるため、人気があります。しかし、魚や肉などの油が耐熱ガラスにこびり付くため「遠赤外線効果」の持続に当時は課題もありました。そこで、ガスの火力を炭火に近づけ、油が付着しにくい熱板の開発と同時に掃除等の手間を省くことを建厨は考えました。


   

  ■ ローストクック
 

この焼物器は建厨のロングセラー製品です。強火の遠火を実現するために輻射熱効果を取り入れました。そのために割れない特殊ステンレス製の放熱板(カバー)を開発しました。また、放熱板(カバー)に穴を開けることで輻射熱効果を上げてその表面温度は850℃に達します。しかも放熱板(カバー)の角度を付けたことにより魚や肉から出る油を熱板の両側へ落とすため清掃が楽になりました。この放熱板(カバー)に手をかざしたときに、手のひらに針で突き刺すような熱の刺激を感じます。この熱の効果で食材を内部からふっくらと焼き上げることが出来るそうです。


   

   
 

ガス輻射熱焼物器はシンプルな製造工程です。だから分解も簡単です。分解が容易にできるため、隅々までキレイに水洗いOKです。しかもステンレス製なので錆びに強いです。


   

   
 

ステーキ用ローストクックは、手作り感を前面にハンバーガーチェーンに採用されました。しかし昭和50年代(1975年代)頃は製品として世に出たのが間もないため、クレームで何度も沖縄まで行った苦労談もありました。

  ■ 無煙ロースター炭火の華
 

同業他社の無煙ロースターと大きな違いは輻射熱を使ったドーナツ型放射板(カバー)です。ドーナツの形から広い火床が可能になり、多量の遠赤外線が放出され、多くの肉・野菜が焼けます。しかも、焼き魚器で得たノウハウを活かして、煙の元となる油をバーナーに触れないようにして水槽に流れ落ちる構造です。この記事の最後に社内展示製品写真があり、その中にドーナツ型放射版を確認できます。

  ■ 1台2役の焼物コンロ
 

このコンロ開発のキッカケは阪神大震災です。災害後のガス復旧工事が進むにつれてコンロも必要になりました。そこで大阪ガスに提案、採用され今日に至っています。


   

  ■ ツインスパイラル燃焼 なべ道楽
 

取材の最初に村本 旭さんはこの製品の説明をされました。平成30年度あいち中小企業応援ファンド助成事業」に採択され、これによって、業務用大出力プレスステンレスバーナーの製造に成功した。その後、あいち産業振興機構のアドバイスを受けて「意匠登録」まで到達したこと、そして特許出願に向け進めていると説明がありました。内径70oで3200kcl/h(3.72kw)というパワフル燃焼を実現させました。


   

   
 

その秘密は火炎の向きにあります。通常、鍋コンロは外側に火炎が広がっています。なべ道楽は火炎が中央に向かっています。火炎が中央に集中するため、コンロが近くにあっても熱くありません。また、熱効率が高く、強火力のため、調理時間も短縮できます。また、レバー操作でガスコックの点火や炎の大きさも調整できるように改良し、点火中はLEDランプが発光しています。

  ■ 製造工程
 

構造がシンプルなこともあり、製造は100%内製化しています。
生産工程は、 材料保管 ⇒ 金属板裁断 ⇒ 型抜き ⇒ プレス ⇒ 折り曲げ ⇒ 組立て ⇒ 検品・出荷 です。

サイズ別に金属板を保管管理しています。それを機械で裁断します。

   

   
 

裁断した金属板を型抜きします。

   

   
 

プレス作業です。写真は焼物コンロに使うステンレスバーナーです。

   

   
 

ローストクックのバーナー工程です。裁断した金属板に小さな穴を開けていきます。ここにもノウハウがあります。

 

   
 

曲げ

   

   
 

組立て 

   

   
 

ローストクックの奥行サイズに合わせたバーナーサイズです。

   

   
 

特殊ステンレス製の放熱板(カバー)です。ここに最大のノウハウが隠れています。

   

   
 

特殊ステンレス製の放熱板(カバー)サイズも複数あります。

   
 

社内入口に陳列されている製品の一部 順番に鍋 焼肉 コンロ 複数コンロ です。

   

   

   
 

焼肉、鍋に用いられているドーナツ型放射板(カバー)

   

   
 

社屋外観

   

  ■ 取材を終えて
 

今回、ネットで検索すると稲沢市、あま市、津島市には不思議と中堅・中小の調理器具製造会社が存在することに驚きました。 村本 旭さんはご子息の吉克さんに昨年事業承継して、現在は取締役です。完全に退任したわけではなく、製品改良や新製品開発には意欲を持ち続け、必要に応じて現場へ顔を出します。他方、時間に余裕が生じたことから今年から四国お遍路をスタートさせたとお聞きしました。インタビュー中も製品のことになると饒舌になりました。根っからの技術屋さんのため、製品のこととなると笑顔になります。おそらく、お遍路の道中で過去の製品開発や苦労したことを思い出しているのではないかと想像しました。


 
株式会社建厨
http://www.kenchu.co.jp/
株式会社建厨|あま市公式ウェブサイト
http://www.city.ama.aichi.jp/bussiness/sangyo/1003800/1003810.html
株式会社コメットカトウ(2016年5月:企業ルポ あいちの製品Products Appealより)
http://www.aibsc.jp/nsj/02seihin/160701_01/index.shtml

 

文責 YA(ワイエイ)ビジネスサポート 杉本 安行

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