後発企業でありながら、独占市場に挑戦し、シェア50%超を獲得するに至った秘密はどこにあるのか。
一つは当然であるが技術力である。
当社は自動車関連の加工専用機を製造する過程で、様々な加工技術を積み重ねてきた。専用機であるが故に、要求される加工能力・機能も一品一様で多種多様な加工技術が求められたのである。こうした積み重ねが、1ミクロンの精度のインキ調整を可能にするインキツボを開発・製造する技術的基礎になっている。
二つ目はアフターサービスである。
「クレームほど、ありがたい話はありません」と岩佐社長。「印刷機の不調で当社に連絡があった時は、症状によらず、とにかくお客様のところへお邪魔するように、という方針です」。当社の製品が原因かもしれないし、そうでないかもしれない。しかし、である。当社製品が原因であれば自社製品の改良につながるし、自社製品が原因でなくても、起こった症状と原因を突き止めればユーザーに喜んでいただける。ユーザーに喜んでもらえれば、印刷機の買い替え・導入時に同一メーカーの指名が来る。指名がくれば当社のインキツボも出荷につながる。
三つ目は提案力である。
実は、提案シーズは、徹底したアフターサービスから得られることが非常に多い。ユーザーの現場で起こる様々なトラブルを熟知することが、次の提案営業につながる。印刷機メーカーから言われたことを言われたようにするのでは、目を向けてくれなくなる。例えば印刷機メーカーが新機種を開発するとき、こうしたクレームやユーザーの声を受け止めた上での提案が可能になる。ユーザー現場のニーズをつかんでいるだけに、メーカー側も耳を傾けざるを得ない。こうして、開発段階から参画することにより確実にシェアを獲得することになる。
新しいコンパクトタイプのインキツボを提案したメーカーからは「これができるのなら、あれもできないか、これもできないか」と結局、「当社印刷機のインキツボは100%寿原製にしましょう」となったこともある。
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