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  トップ > 経営相談Q&A 組織活性化Q&A > 「原因追求」と「責任追及」と使い分ける 他責と自責と事責と
3分で分かる、人と組織の活かし方
(「原因追求」と「責任追及」と使い分ける 他責と自責と事責と)
宇井克己 記事更新日.07.03.08
宇井経営コンサルティング事務所代表 
名古屋コーチングラボラトリー協同組合 代表理事 
中小企業診断士、財団法人生涯学習開発財団認定コーチ
■PROFILE
1965年7月29日生まれ。製造業での営業、コンサルティングファームでの企画営業などを経験したのち、2002年に宇井経営コンサルティング事務所を設立し、独立。
経済産業省が認定する中小企業診断士の資格を活かし、さまざまな業種・規模の企業に、「いかに会議を活性化するか」、「いかに管理職を育てるか」、「いかに売上を上げるか」などのコンサルティングを行っている。
また、「会議活性化研修」「管理職のためのビジネスコーチング研修」「営業マン研修」など、受講者とともに作り上げるライブ感溢れる研修も好評を得ている。
メルマガ「芸能・スポーツで学ぶ、人材育成の裏ワザ」も発行している。

連絡先
(編集注:事務所移転のため2007年7月以降の記事をご覧ください)
宇井経営コンサルティング事務所
〒460-0002   名古屋市中区丸の内三丁目21番34号 
                      YMTビル5F
TEL/FAX0568−35−5125
http://www.ui-consultant.com/index.html
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Q1:
先日、コーチング研修を受講しました。そのとき講師の人は、「コーチングの質問では、『なぜ?』というのは使わないようにしてください。『どうしたらできる?』という質問に変えてください」と熱弁されていました。今まで、現場では、「なぜを5回繰り返し、問題の真因を追及しろ」と教わってきました。それが 、「人材育成では“なぜ”を使うな」と言われてとまどっています。どう考えたらいいのでしょうか?
A1:
はい、質問ありがとうございます。しかと承りました。
確かにおっしゃるとおり、職場では「なぜを5回繰り返して、問題の真因を追究しろ」とよく言われます。
トヨタ生産方式のひとつに、「なぜを5回繰り返す」という考え方があります。特に製造現場では、不具合が発生した場合などには、その発生の真因を追究して、本当の意味での対策を施すために、「なぜを繰り返す」ことが求められています。
ずっと、「なぜを繰り返せ!」と言われて育った方も多いはずです。

ところが、管理職になって管理職研修の一環で部下育成の手法としてコーチングを習うと、「なぜ?という質問は危険です。部下育成の観点からは使わないようにしましょう」と教えられます。
まったく今までの考え方と違うわけです。パラダイムシフトを求められているようで、非常にとまどわれる方も多いと思います。

しかし、よく聞いてください。このトヨタ生産方式で言われている「なぜ」と人材育成の観点から避けた方がいいと言われている「なぜ」はまったく別物の「なぜ」なのです。

何が違うかを今からお話をしましょう。

一言で言えば、トヨタ生産方式の「なぜ」は、『原因追求』の「なぜ」です。人材育成の観点から使うのを避けた方がいい「なぜ」は『責任追及』の「なぜ」です。

その原因追求と責任追及の違いをご理解いただくために、ちょっとした事例をお話しましょう。あるクレーム対策会議での一場面です。

上司がが部下の山田君に話をしています。
「山田君、なぜ、木村君に任せるときにしっかりと指示しなかったの?危機感がないからこんなミスを起こすんじゃないの?山田君がどういう気持ちで仕事に取り組んでいるのか、今日はそれを聞きたい!」。
上司が部下を叱責。部下は一言も発することなく、うなだれる・・・。  

ここで管理職が使っている「なぜ」は、責任追及の「なぜ」です。原因追求の「なぜ」ではありません。
つまり、木村君に指示をしっかりしなかった山田君を責めているわけです。
確かに指示をしっかりしなかった山田君が悪かったとしても、このように責められていては、山田君のモチベーションは下がることはあっても高まることはないでしょう。また問題の原因を探ることにもならないでしょう。

このように、「なぜ〜ない?」という「なぜ+否定形」の質問は部下を責めることにつながりやすいのです。
「なぜ、できないの?」
「なぜ、うまくいかないの?」
「なぜ、お客さんにちゃんと確認してこなかったの?」
「10年働いていて、なぜ、こんなことにも気づけないの?」

などなど・・・。

これらの質問を受けた部下が、現状の問題を解決して、新たな行動を取っていくとは思えませんよね。

では、原因追求とはいかなるものでしょうか?
それを理解するためには、トヨタの「5回のなぜ」の根底に流れる考え方をお話すると分かりやすくなります。
トヨタの考え方では、「なぜ」を使ったとしても、決して人を責めることはありません。問題が起きたとしても、それは人が悪いのではないのです。仕事の仕方、進め方、仕組みの中に何がしかの悪い点があって、その悪さが、たまたまある特定の人に現れてしまった、だからその悪さを探って、仕事の仕方、進め方を変えていこうと考えるのです。
決して人を責めることはありません。

つまり、問題を起こした部下が悪いのではなく、その問題を起こさせるような仕事をさせていたことが悪いと考えて、その仕事のまずさを追求して行く「なぜ」なのです。

ご理解いただけましたでしょうか?

ですから、「なぜ」を使うなというのは、「責任追及のなぜ」を使うなということであり、「原因追求のなぜ」はどんどん使っていただかなければいけません。
コーチングで説明されたことを表面的に捉えてしまうとこの本質を見誤って、単純に「なぜ」を使ってはいけない、とコミュニケーションを窮屈にさせてしまいかねません。
 
この点はしっかりとご理解くださいね。

Q2:
問題を捉える場合には、人のせいにするのではなく、自責の念が必要ととよく言われます。また時に、原因を追究する場合に、人の責任にするのではなく「コト」の責任(原因)を考えろと言われるときもあります。それらの区別がどうもうまくつきません。分かりやすく説明をしてください。
A2:
はい、承りました。私も、管理職の教育や会議の運営方法を教育する中で必ずといっていいほど言っています。
「管理職は常に自責の念で問題を捉えるようにしましょう」
「会議で問題解決を図る場合には、原因追求も対策も『私(もしくは我々)』を主語にして考えてください」 と。 

分かりやすい例でお話をしましょう。

たとえば、部下に危機意識がないと、上司がが感じていたとしましょう。
上司にしてみると、この「部下に危機感がない」というのは問題事象です。
このように問題事象が発生したときに、人間の思考は、その問題の原因を探る方向に行くか、その解決策を考えだす方向に行くかのどちらかです。

原因を考える方向であれば、
「なぜ、部下は危機感がないのだろう?」となりますし、
解決策を考える方向であれば、
「どうしたら、部下は危機感を持つだろう?」となります。

これらの疑問文は自責でしょうか?実はこれらの疑問文には自責の念は現れていません。他責の念が表れた文章になっています。

自責の念が現れるとこのようになります。
「なぜ、私は部下に危機感を持たせられないのだろう?」
「どうしたら、私は部下に危機感を持たせられるだろう?」

この違い分かりますか?分かりますよね。

他責の場合は、他者(部下は)が主語、自責のときは自分(私は)が主語となった文章になります。

で、これだけで終わってはいただいた質問に全部お答えしていません。
人ではなくコトを責任の対象とする考え方も必要だといわれているんですよね。おっしゃるとおりです。
このコトを責任の対象にする考え方は非常に大切です。
なぜなら、自責にしていると、特に原因を探る自責はストレスがたまります。
部下に危機感がないときに、「なぜ、私は部下に危機感を持たせられないのだろう?」を考えすぎていると、「あぁ、部下が育たないのは、私の責任だ!私に力がないのだ・・・。私は管理職失格だ・・・」、とめちゃくちゃ暗い気持ちになっていきますからね。
下手をしたらうつ病になってしまいます。あまり自責といって自分を責めすぎるのも問題ありなのです。「どうしたら、私はできるだろうか?」なら未来に目が行っていますので、OKなのですが・・・。

精神的に参ってしまわないためにも、コトを責任の対象にすることも求められるわけです。
で、コトを責任にするというのは、その部下も悪くない、自分も悪くない、何か他のことに原因があるのだという考えです。つまり事責(コトの責)です。
たとえば、先ほどの例で言うと、
「何が部下に危機感を持たせないようにしているのだろう?」
「何が部下に危機感を持たせるだろう?」

となります。

これらのことを整理するとこのような表にまとめられるでしょう。

※問題:「部下が危機感を持っていない」
- 他責
(彼は、彼らは、あなたは)
自責
(私は、我々は)
事責
(なに)
原因(なぜ〜)
意識は過去に向かう
なぜ、彼は危機感がないのだろう?
×
なぜ、私は彼に危機感を持たせられないのだろう?
×
何が彼に危機感を持たせないようにしているのだろう?
手段(どうしたら〜)
意識は未来に向かう
どうしたら、彼は危機感を持つだろう?
×
どうしたら、私は彼に危機感を持たせられるだろう?
何が彼に危機感を持たせられるだろう?
いずれにしろ、他責の念では、問題解決はしていけません。
まずは自責で考えながら、事責も考える。自責で考えるときは、ストレスがたまらないように注意する。これを実践していただければいいでしょう。
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