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省エネのパラドックス
野口昌介 記事更新日.07.03.14
野口技術士事務所所長
■PROFILE
1934年愛知県生まれ。
三菱電機(株)、フォスター電機(株)、日本電産(株)を経て、平成3年野口技術士事務所を設立、現在に至る。愛知県中小企業支援センター専門員、愛知県商工会連合会専門員。

<資格>
技術士(電気電子、経営工学、総合技術監理部門)、中小企業診断士、電気主任技術者第1種、エネルギー管理士、公害防止管理者、ISO9000審査員補

<著書>
現場の電動機技術、電気機器実務必携、絵とき電気機器マスターブック(オーム社)、不良低減(共著、日本規格協会)

<主な講演>
コストダウンの進め方、省電気エネルギー

<専門>
企業診断・指導、工場管理、品質管理、作業改善、不良低減、コストダウン、電気機器技術指導、省電気エネルギー、ISO9000認証取得の指導

連絡先
野口技術士事務所
〒463-0055 名古屋市守山区西新17-30
TEL/FAX 052-792-0172          
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A:
省エネのパラドックスとは刺激的なタイトルですね。
B:
刺激的過ぎましたかね。   
でもね、全くの誤りとは言いませんが、条件の不適合、検討不足、あるいは過大な期 待から、本来の目的を達することなく意に反する結果の場合が結構あるのです。
A:
特定の事項または分野の問題でしょう?
B:
いやいや、そうでもないのです。   
説明あるいは利点の一面のみを受け止めて、それのもたらす他の事項を考えるのをおろそかにすると陥るのですよ。   
いろいろなケースがあるのですが、インバータの場合について説明しましょう。
A:
インバータの場合って・・・?   
インバータの導入は、省エネのエースでしょう。そんな・・・。
B:
確かにインバータは省エネの有効手段でエース格です。でも、条件が適合しないと反する結果に陥る。十分に検討して導入していただきたいということなのです。   
インバータを導入した場合の損失の問題です。   
振動や騒音等の問題もあり得ますが、損失−エネルギー−の問題に絞ります。   
少なくとも次の事項を考える必要があります。
(1)インバータの波形から来る誘導電動機の高調波損失
(2)インバータ自体の損失・効率

日本電機工業会技術資料JEM‐TR 1691)によりますと、100%負荷においてJIS‐ C‐4210の特性値に対して、
(1)項により誘導電動機の効率は 96%
(1)(2)項により総合効率は 92%
としております。

平均値といっておりますから、一つの目安です。上下はあり得ます。
定格容量にもよります。
負荷をポンプかファンとしましょう。ポンプ及びファンの所要動力は回転数の3乗に比例します。ですから、これらの負荷においては回転数の低減−インバータの導入− が推奨される訳です。
しかし、入力は所要動力をポンプ効率及び総合効率で割った値です。
使用して入力が見合わねば省エネにはなりません。
総合効率92%ですから、所要動力が92%以下になる回転数Xを計算してみましょう。

97%以下、言いかえると3%以上回転数を抑制しないと、かえって入力増、ですから エネルギー増になってしまうことになります。
A:
インバータを導入するからには、それだけ投資している訳でしょう。その費用の回収   
は・・・、もっと回転数を下げないと・・・。
B:
3%程度の回転数の抑制では、当然できませんね。   
これが問題なのです。企業ですから投資費用の回収は必達と言って良いでしょう。投 資費用の回収まで考えると3%よりさらに大きく回転数を抑制する必要が生じます。   
従って効率、真のエネルギーの低減を考えての導入が必要です。   
図1は日本電機工業会技術資料JEM‐TR 1482)にある電動機容量とインバータ駆動時の 総合効率例です。92%より低いですねえ。
15kWで84%ですか。
 

くらいになりますね。

A:
ではこの図を参考にして検討を・・・。
B:
いやいや、まだ早まらないで。   
図1は100%負荷トルク−定格出力での話です。   
回転数をぐっと下げるべく周波数を下げた場合、負荷トルクの小さい場合の特性を考 えておく必要があります。
この場合の曲線の一例は図23)のごとくです。
ポンプのインバータ付加運転の場合の例を図34)に示します。

 

A
ぐっと下がりますねえ。
B:
これらを総合的に考えた上での判断が求められます。   
インバータ駆動は、簡単に回転数を抑制制御できる点からは非常に便利です。   
随時回転数を変更制御運転する必要のある用途にはもってこいの機器です。   
この様な用途への導入は何ら迷うことはありません。   
問題は「真に省エネ効果をもたらすか」です。
 (1)回転数の少しの抑制で一定回転数での使用ならばプーリー径の変更
 (2)かなりの回転数の抑制で一定回転数での使用ならば極数の多い電動機への変更
で対応できるでしょうから、これらの方法での対応とのエネルギー消費・経済性の比較検討です。
フィーリングではなく、数値で比較検討し経済性を吟味するべきものです。
A:
でも、経済性だけではCO2削減の問題が・・・。
B:
それはその通り。   
経済性を吟味した上の、企業としてのCSRからの判断はその上の政策的判断になります。
でも、経済性の数値は明確に把握しておくべきことですね。
A:
先程、振動・騒音と言っておられましたが・・・。
B:
省エネのテーマではありませんので触れませんが、増加傾向にあります。注意して下さい。   
電磁接触器の開閉やコンデンサの経時変化等の取扱上の注意事項も多々ありますから、   
カタログの注意事項及び取扱説明書はよく読んで使用して下さい。
A:
回転数を変えますよね、その時の動力とエネルギーの関係はどうなのですか。
B:
これもまた誤解しないでほしいのです。
回転数の一乗に比例する機械動力の場合を考えましょう。
動力は次の式で表されます。  
P = FV   P:動力[N-m/s] = [W],   F:力[N],   V:速度[m/s]
従って、速度が下がれば所要動力は下がります。
エレベータ・エスカレータ・コンベア等、速度が下がれば所要動力は下がります。
仕事を考えてみます。仕事はエネルギーです。
仕事は次の式で表されます。  
E = FS    E:仕事[J]=[N-m] = [Ws]
    = F(Vt)   S:距離[m]   S = Vt,    t:時間[s]
    = Pt
A:
ということは、   
速度を下げれば所要動力は下がる。しかし、所要時間が長くなる。   
だから、距離が変わらなければ仕事−エネルギー−は変わらない。   
だから、エネルギーを下げようと思ったら、力あるいは距離、または、力・距離の双方を低減する必要がある。
B
その通り。   
所要動力は[kW]、仕事−エネルギーは[kWh]です。   
力は加速するものでしたら   F = Mα     α : 加速度[m/s2]     
持ち上げる物でしたら      F = Mg    M : 質量[kg]、g:重力加速度9.8[m/s2]     
横に移動する物でしたら     F = μMg   μ : 摩擦係数   
従って、エネルギーを低減するためには、
(1)
動かす質量を低減する。
(2)
移動距離を短くする。
(3)
加速度を小さくする。
(4)
潤滑を改善して摩擦係数を低減する。
これが必要です。
質量の移動及び移動の距離等はまさに価値を生まない「ムダ」そのものです。
低減どころか、徹底した“零化”を追求するべきでしょう。
物の移動だけではありません。我々自身の移動も同様でしょう。
ムダの低減はエネルギーの低減に直結致します。
先程の補足ですが、速度を下げた結果、移動する積載量−質量Mその物ですが−これが増加したら何にもなりません。
A:
省エネのパラドックスの他のものは・・・。
B
またの機会にいたしましょう。
参考文献
1)
日本電機工業会技術資料 
  JEM-TR 169 一般用低圧三相かご形誘導電動機をインバータ駆動する場合の適用指針       
2)3)
日本電機工業会技術資料 JEM-TR 148    
 インバータドライブの適用指針(汎用インバータ)
      
4)
丸岡巧美:ビル・工場設備の省エネ対策実務必携(オーム社)       
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