ターゲット選定とは?
新規開拓営業を行うにあたって、どの商品・サービスをどれだけ営業していきたいかが固まったら、次にターゲット選定を行います。ターゲット選定とは「自社の商品・サービスをどのような人(企業)に導入をしてほしいか、買ってほしいか、勧めていきたいか」を決めることです。
しかし、どのような人(企業)に買ってほしいかを定めただけで、その後何もしないのでは状況はまったく変わりません。そのターゲットに対して具体的にどのようにアプローチをするかまで考えることが、広い意味でのターゲット選定を完成させることになります。よってこのパートでは、ターゲット選定を以下の表1の3つの段階に定義をしていきたいと思います。
1. | 自社の商品・サービスを買って頂きたい人(企業)を定める |
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2. | その人(企業)がそのエリアにどれだけ存在しているかを把握する |
3. | 具体的にアプローチをする手段を構築する |
表1 ターゲット選定の定義
商品・サービスを買って頂きたい人(企業)を定める
ターゲット選定の最初の段階は、自社の商品・サービスを買って頂きたい人(企業)を定めることです。では、定めると言っても何を定めれば良いのでしょうか?実践的にはターゲット選定は表2の4つの選定軸を定めることを推奨しています。
1. | 業種 |
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2. | エリア |
3. | 企業規模(人数規模) |
4. | 担当部署 |
表2 ターゲット選定軸
「業種」はそのままの意味です。国の定める業種区分もあれば、電話帳区分、調査会社区分など様々な業種区分がありますが、それぞれ互換性がありますので、一般的に知られている業種で設定すれば一般的にはOKです。
「エリア」もそのままの意味です。市区町村で区切る場合もあれば都道府県で区切る場合もあります。エリアを区切る時に重要な考え方は、「こちらから積極的に営業に行くとしたらどこまで行くか」ということです。仕事があって向こうから呼んでくれるのであればある意味どこでも行けますが、こちらから積極的に営業に行くということは行った先には仕事が無いかもしれません。それでも行ってもよい範囲はどこか、というのがエリアを決めるポイントです。
「企業規模(人数規模)」について、企業規模によって会社の状態が変わっていきますので、自社が最も取引をしやすいのはどの企業規模なのかを認識しておく必要があります(表3)。
企業の状態 | 人数規模 |
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家業と呼ばれる状態。 基本的にすべての決済権を経営者が持っている。 | 1名 |
家業と小企業との境界線。 ある商品や技術に特化し、市場で存在感を示す企業も存在する。 | 20名 |
個人経営と組織経営の境界線。 この規模から総務部などの管理系の担当者が存在し始める。 | 50名 |
小企業と中企業の境界線。 組織体系がより重要視され、年間予算によって動く企業が出てくる。 | 100名 |
中企業と中堅企業の境界線。 企業組織が確立され、ほとんどの企業が年間予算によって動く。 | 300名 |
中堅企業と大企業の境界線。 この規模以上になると、新しい業種と直接取引をしない企業も多い。 | 1,000名 |
表3 企業の状態と人数規模 |
「担当部署」は、その企業の中でどの部署にアプローチをするかということです。同じ企業でも訪問をする部署によって、訪問内容が有意義にもなれば無意味にもなります。
この4つの軸以外に考えられる軸として、売上高や利益額があります。確かにこの2つの選定軸も有効ではあるのですが、この2つの情報を入手するためには一定以上のコストがかかります。前述の4つの選定軸は、入手するためのコストが安価であるため、どの企業でも実践できる選定方法となります。
御社のターゲットは全部で何社いますか?
前述の方法を使って、御社が取引をしていきたいと考える企業を選定した後は、実際にその企業がどれだけ存在しているかを調べる必要があります。この理由として、例えばターゲットとする企業が100社であるという場合と、10,000社であるという場合とでは、その後に行うアプローチの方法が異なってくるためです。
エリア内の企業数を知る方法は、電話帳のネット版を活用し、業種とエリアを設定することにより、登録されているおおよその企業数を知ることができます。
最適なアプローチの手法は何か?
アプローチをしたい企業を定めてその数を把握した後は、いよいよ具体的にアプローチをする手段を構築していきます。アプローチをする手段は様々ありますが、表4は代表的な手段とその特徴をまとめたものになります。
表4 アプローチ手段の種類と評価
ここでのポイントは、いくつかの評価軸に対してどの手段も必ず一長一短があり、万能な手段はないということです。それにより、アプローチ手段の構築には、複数手段の採用が必要になります。1つの手段のみに頼るとその手段の長所短所が色濃く反映されますが、複数手段の採用により、それぞれの手段の長所を生かし短所を補い合い、アプローチからの効果を伸ばすことができます。
そして、アプローチの手段構築において、もう1つ重要なことは、選定した複数の手段を継続して実施をすることです。何か1つのアクションを起こす(例えばダイレクトメールを送る)場合、そのダイレクトメールが送られてきたことを知っている人は、送った総数の約3割です。ですので、約7割の人はダイレクトメールの内容が欲しいか欲しくないかということ以前に、それが送られたことすら知らない状態だということです。たった1回のアクションでは、それだけの人しか認知できません。どの手段も継続して行うことによって、アプローチからの効果を伸ばすことができるのです。
営業に関する費用の適正化とは?
アプローチの手段は、複数手段を継続することが重要と前述しました。理想的には、可能性のあるすべての手段をフルにずっとやり続けることが良いのですが、それでは費用が青天井で増えていってしまいます。営業に関する費用(販促予算)がありますので、その範囲内で手段の構築をしなければいけません。
私たちの調査では、訪問型の営業活動を行う企業の場合、適正な販促予算の数字は目標とする粗利益の5%程度という結果が出ています。複数手段を継続するという考え方は残しつつ、販促予算内に収まるように、最終的なアプローチ手段を構築していきます。